ブラジル留学記事 2013年度修士卒 幸前穂
━━━ブラジルへ
- 日本から飛行機で約30時間。時差-12時間。まさに地球の裏側の国であるブラジルに大学の夏休みを利用して、約二ヶ月間の留学に行ってきました。ブラジルに留学?と思われる方が多いかと思いますが、私はこの二ヶ月間でブラジルの人々、ブラジルの大学、そしてブラジルの文化に触れ、BRICSと呼ばれる今世界で注目を集める発展途上国の一角であるブラジルという国を直に体感し、これまでの自分の見識を大きく広げる経験をしてきました。
- ブラジルと言えば、Rio de Janeiroのカーニバル、サンバの国という情熱的なイメージがある一方で、実際のところは治安が悪そうな得体の知れない国と思っておられる方も多いのではないでしょうか?最近のニュースでは、翌年に控えたサッカーのFIFAワールドカップや2016年開催予定のRio de Janeiroオリンピックの影響により物価が高騰し、デモが連日行われていると報じられています。私が二ヶ月間暮らしていたSao Paulo州Campinas市Barao Geraldoという地域では、デモこそなかったものの、確かに治安に関してはあまりよくない噂を何度か耳にしました。しかし、Campinasはブラジルの中で最も生活レベルの高い都市圏という評価を受けているだけあって、街に住む住民の生活水準は非常に高いという印象を受けました。
━━━University of Campinas
- 私がブラジルで通っていたUNICAMP (University of Campinas)という大学はブラジルで2番目、南米でも3番目に名を上げる総合大学です。そして私が二ヶ月間を過ごした研究室では、主に洋上での石油開発に使用されるライザー管のVIV (Vortex Induced Vibration)現象についての研究が行われており、教授のCelso Kazuyuki Morooka先生はVIV研究の第一人者として活躍されています。ブラジルでは海底に豊富な石油資源が眠っているため、その海底石油を開発するための浮体式海洋構造物の研究が大変盛んに行われているのです。私はそこで学部生時代からの研究テーマである浮体式洋上風力発電に関する研究をしていました。OrcaFlexという浮体構造物の係留システムの運動解析や疲労解析が可能な計算ソフトと、私がFortranで作成した浮体の運動解析プログラムをカップリングし、浮体式洋上風力発電の全体システムの運動解析プログラムを完成させるというのが私のブラジルでのミッションでした。ブラジルではまだ再生可能エネルギーがあまり浸透していないということもあり、研究室ではみんなが私の研究に興味を持ってくれ、大変協力的にサポートをしてくれました。しかし英語で研究に関するコミュニケーションを取ることはとても難しく、相手の言っていることが分かったとしても自分の英語力の低さのために思いを伝えられないことがしばしばあり、歯がゆい思いを何度もしました。それでも何度も何度もお互いが理解し合うまで話合いを繰り返すことができた結果、私がブラジルを立つ当日ギリギリに何とかカップリングを完成させることができました。
━━━UNICAMP生活
- 私がブラジルで過ごした二ヶ月という時間は、まさに“光陰矢の如し”という言葉の通り一瞬そのものでした。初めは言語も文化も国のことも全てが未知の土地での生活に不安もありましたが、そこに住む人々の暖かさに救われ、最初から最後まで本当に充実した時間を過ごすことができました。平日も研究室から家に帰ればハウスメートとほぼ毎日のようにバーに行き、休日になれば先生や研究室の友人が街のダウンタウンを案内してくれたり、先生の家でChurrascoというブラジル式のBBQ(バーベキュー)をしたり、ハウスメートと買い物に出かけたり旅行に出かけたりと、研究の合間を縫って毎日のようにとても楽しいイベントがあり、めまぐるしく時間が過ぎてゆきました。
- 二ヶ月間という非常に短い期間ではありましたが、ブラジルという土地で生活し、現地の文化に触れながら研究をできたことはとても幸せなことであり何事にも代え難い経験となりました。そして、今BRICSとして大きく発展を続けるブラジルの一流大学で学ぶ学生の意識の高さ、志の高さは見習うべきところであると感じました。みんなが自分の専門を身につけるために大学で学び、社会で活躍するために必要な技能を自ら認識して勉強している姿にはとても感銘を受けました。ブラジルで見たこと、聞いたこと、感じたこと、経験したことの全てを自分のこれからの修士論文の研究に留まらず、来年から社会人として働くための、さらにはこれからの人生の糧として生かしていきたいと思います。
- 最後に、私がブラジル留学を決めたきっかけは昨年ブラジルのRio de Janeiroで開催されたOMAE(Ocean, Offshore & Arctic Engineering)という海洋開発関連の国際学会に参加したことでした。そこでCelso Kazuyuki Morooka先生を紹介して頂いき、UNICAMPへの留学を直接交渉して実現したものです。私の留学を快く受け入れて下さり、さらには留学期間中さまざまなお心配りをして下さったMorooka先生には心より感謝しております。本当にありがとうございました。
- またいつか、必ずブラジルへ帰ります!