LAB. LIFE(Under Graduate Course)

研究室での生活(4回生)
 大阪公立大学工学部海洋システム工学科の3回生の終わりになると、希望者は当研究室に配属されてきます。研究室には、4回生の卒業研究を行う学生と、博士前期課程(修士課程)において修士号取得に向けて研究を行う学生と、博士後期課程(博士課程)において博士号取得に向けて研究を行う学生たちが所属していています。

 このページでは、それぞれの過程における研究生活について見てみましょう。
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研究テーマ

 研究テーマは人それぞれとなり、テーマは一人一つのテーマとなります。大枠については、教員から提案する場合が多いです。その後、学生と話し合い、1年間でどのようなスケジュールで進めるのかや、将来的に明らかにしていくべきことや、実験の方法等について決めていきます。研究室の配属は3月末ですが、研究テーマは大体半月程度で決定します。
 我々の研究テーマは、開発に直結することがとても多いです。または、開発の途上で明らかにしなくてはならない事案を研究することが多いです。こんなものがあったら絶対に良いのに、というものを形にして生み出し、出てきた課題を研究する、そしてそれを次の開発に生かす。こんなことを繰り返しながら進めています。ですので、始まった研究開発は製品化に繋がるところまでやっていきたいという気持ちがあります。その為には、実験室を出て、実際の海上での試験も行っていきます。
 浮体式風車も海上試験をやっていますし、四胴自動航行船も全て海でのトライアルを実施してきました。一つの製品を作る際に行われる研究、開発の一連の流れを研究室所属の学生の皆さんにも体感してもらえたら嬉しく思います。

ステレオカメラによる測距およびその実装

ステレオカメラ

   ここではロボット漁船のステレオ画像法による制御を行った学生の研究を例に取ってみましょう。ロボット漁船は既にGPSや地磁気センサーで自動で動く実験モデルがあります。ロボット漁船は生け簀への自動着岸や自動給餌機への餌補給のタスクが出来ないとなりません。それをする為には人間の目に該当する知覚が必要となります。
 そこで卒業研究ではステレオ画像によるロボット漁船の自動制御手法に取り組むこととなりました。
 近年では、使いやすいオープンソースも増えてきました。ステレオ画像法については多くのオープンソースがあります。自身でそれを参考にしてラズベリーパイやノートPCに実装していきます。この研究の場合、一つは構築したステレオ画像による測距精度を調査しておく必要があります。その上で、ステレオ画像による測距プログラムをロボット漁船の自動着岸プログラムや餌補給ノズル制御プログラムに組み込んでいきます。
 最後に餌補給ノズルの制御や自動着岸制御が正しく作動するかを調査していきます。

ステレオカメラによる測距精度検証実験

 ステレオ画像法には色々と前処理がありますが、ここでは割愛します。図は構築したステレオ画像法による測距の検証試験の様子です。

ステレオ画像法による測距の検証

オレンジ色の箱をステレオカメラから徐々に離していき実際の距離とステレオ画像法による測距結果を比較しました。ここで使ったステレオカメラは一般販売されているようなステレオカメラではなく、カメラはwebカメラのような安価なカメラで、さらには3Dプリンターでステレオカメラ化しています。安価なこんなものであればロボット漁船にも搭載が可能そうです。
 検証試験の結果、ノズルの制御や、自動着岸の制御にも十分使えそうということが分かりました。

左のカメラ画像

右のカメラ画像

ロボット漁船の自動着岸制御

 ロボット漁船は4つのストラット付きスラスターにより自由自在な操船を容易にする特徴を持っています。ステレオ画像によって得られた測距データに基づきスラスター向き、及び推力を制御して着岸点に向けて制御をしていきます。

ロボット漁船の自動着岸制御アルゴリズム

実験の結果、測距データに基づきロボット漁船の自動着岸が可能であることが明らかになりました。自動航行から自動着岸、そして自動係船までの一連の自動化が実現したことになります。既に2022年度に当研究室ではLiDARを用いての自動着岸も可能にしてきたので、2種類の手法での自動着岸を可能にしました。

ターゲット

ロボット漁船に取り付けられたステレオカメラ

卒業論文および論文投稿

 実験データに基づく新たな現象、物理モデル構築とシミュレーションによる解析が出来てくると、それを纏める最後の大仕事がやってきます。1月くらいから論文を書き始め、1か月くらいをかけてもらっています。足りないデータや、検討が十分でないモデルは卒業論文を書きながら更なる検討を加えていくことがほとんどです。
 多くの場合、どの条件でも成り立つ物理モデルはあり得ないものです。あらゆる角度から物理モデルを検証していくと、あれは足りない、これは足りないと、もがき苦しむものです。そうこうしながら考えていくと、より確からしい物理モデルが出来上がってきます。このような試行錯誤がとても大切だと思っています。 もがきながら考えた先に見える新しい発見こそ、とても重要な宝になるはずです。
 卒業研究では、そのような課題にじっくり取り組んで欲しいと思います。
 非常に優れた研究についてはより専門的な学術会議や科学誌への論文投稿を目指していきます(Example)。折角一年かけてきた研究ですので広く知ってもらったり、新しい視点を加えて次なる高みを目指していくことになります。Exampleの発表は2024年日本船舶海洋工学会の春季講演会において若手優秀講演賞(三菱賞)を受賞することとなりました。

海外へ

 卒業研究の発表が終わると、研究室の学生は自費で海外留学に行くことが多いです。これまでにも、フランス、ドイツ、ブラジル、イギリスといった様々な国に行っています(詳細はこちら)。海外の大学や海洋工学研究所に行き、卒業研究で行った研究を発表し、ディスカッションすることで、その国ならではの着眼点から意見をもらえたりすものです。大切なことは、広い視点から物事を考えるということではないかと思います。
 また、滞在先の研究室で行われている研究を手伝うこともしています。ですので、卒業研究を終えたばかりの3月、4月の2か月間行くというのが大体のパターンです。卒業研究を終えて、羽を伸ばしたいと思うかもしれないが、皆さんの大切な時間を他では出来ない大変に貴重な経験に変えて欲しいと思っています。