LAB. LIFE(Doctoral Course)

研究室での生活(博士課程)
 博士後期課程?博士前期課程?違いは何?、このように思われる学生さんもおられるでしょう。ここでは、博士後期課程なるものが何か、どのような生活を送るのか、その後の進路は?といった疑問に答えていきたいと思います。
 博士後期課程というのは、博士論文を書いた後に博士号(工学)を取得できる課程のことです。修士号を持っていれば、この博士後期課程に進む資格を得られます。修士号は持っていなくとも、企業や国の研究所等での研究業績が非常に多く、 博士号に進む資格を得られる特別なケースもありますが、多くは修士号を持って博士後期課程に進学します。進学の仕方は2通りあります。一つは博士前期課程(修士課程)を終えて博士後期課程(博士課程)に進むパターン。もう一つは、修士号を取ったのちに企業や研究所で務め、大学に戻るパターンとなります。二つ目のパターンは働きながらということになります。
 博士前期課程は2年間、博士後期課程は3年程度となります。博士後期課程では、講義を受けるのは非常に少なく、そのほとんどを研究生活に充てます。よって、成果が出ない場合は3年で終わらず延長することもよくあります。

 それでは、この博士後期課程における研究生活について見てみましょう。
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研究テーマ

 研究テーマは修士の時の研究テーマを引き続き深めていく場合が多いかと思います。深めていく中で色々な新しい技術やアイディアを導入するような形になります。
 博士課程だからと言って、全て学生に一任するわけではありません。研究テーマは、教員や研究員や学生と話しながら方向性を見出していくような形になります。
 例えば数年前の博士課程の学生はポテンシャル理論の中でも波漂流力に着目して研究を進めました。最初からこの問題に取り組んだというより、模索しながら波漂流力の問題でも、もう少し簡便な計算手法があっても良いのでは?という素朴なニーズから研究をスタートさせました。
 他にも現在進行中の研究について紹介します。近年、ドローンのような小型飛翔体がどんどん使われるようになってきています。一方で、洋上でこのようなドローンを使う場合、無人船との組み合わせということが今後検討されるようになるでしょう。となると、ドローンが無人船に着艦しなくてはならないことになります。しかし、ドローンの下降流はかなり大きな力なので、着艦時に船が下降流で流されることが大いに想像されます。このような背景から、ドローンの下降流の浮体への影響を解明してみようというのが進行形の研究です。この研究も博士の学生と話し合いながら新規性と面白さを鑑みながら決めたテーマとなります。

研究生活

 どのような研究生活を送るのか? というと、テーマに沿った実験解析解析結果を説明する為の物理モデル構築理論構築論文化研究予算申請この繰り返しといったところでしょうか。
 実験を行って、仮説を立てて物理モデルを構築して、その実験が説明できるようになると何か一つ分からなかったことが分かったようになってとても楽しい気分になります。 実験解析解析結果を説明する為の物理モデル構築理論構築論文化研究予算申請って見ようによっては同じことの繰り返しに見えるかもしれませんが、その一歩一歩の山をのぼりながら眺める景色は本当に気持ちが良いものです。
 研究生活は、毎日毎日このようなことの繰り返しになります。
 年に数回は国内会議に出席し発表をしたり、国際会議で海外に行って成果を公表したりします。成果を発表する時は、自分の打ち立てた理論やモデルが日の目を見るようで感慨ひとしおというものです。全てがそういう場合ばかりではありませんが。いずれにしても、良い結果であろうとも、悪い結果であろうとも、会議で公表し、色々とディスカッションし、次に繋げるということがとても重要です。また、 国際会議は風光明媚な場所で行われることも多いので、それも一つのモチベーションになったりします。

研究成果としての論文

 博士後期課程では、様々なところに成果をまとめて論文を投稿していきます。国内会議、国際会議、国内雑誌、海外雑誌等です。研究する中で、新しい発見があります。実験で得られた面白い現象や、現象を説明する為のモデルの検証等々、論文といっても色々な論理展開を行って書き上げます。国内会議は年に2回程度、国際会議は年に1回程度、雑誌は年に1回から2回程度を目標に論文を書いてもらっています。

博士号取得後の進路

 博士号取得後の進路として、大学、公設の研究機関、一般企業になります。一般的に博士号を取得すると大学の教員くらいしか進路はないと思われがちですが、決してそんなことはありません。私の大学時代の周りの仲間たちでも博士号を取得後すぐに大学教員になったものの方が稀です。また、研究職しか仕事が無いように思われがちですが、それも偏った見方です。工学においては研究と開発は同時進行であることが非常に多いと思います。開発の過程で生じる問題の原因の究明等々、次のステップに進むためには研究が必要になります。よって、開発の現場であっても研究によって培われた論理的思考も必要な訳で、必ずしも研究職だけで活躍するということではありません。
 博士課程における研究の段階で色々なことが身に着けられるものです。自身の研究の中で使う 高度な先端技術により物事をより深く見ることが出来るようになります。論文を発表する中では、最前線の技術を調査研究しなくてはなりません。 物事を俯瞰敵に、多面的に見る力がつくと思います。工学的な研究は、その時代時代によって大きく対象が変わります。深く、広く物事を見るという力を養うことによって個としての力がつくのではないかなと思いますし、この力によって次の研究開発の進展があると考えます。その力があれば、企業であろうと、大学であろうと公設の研究機関であろうと活躍の場はあるものです。