LAB. LIFE(Master Course)

研究室での生活(修士課程)
 博士前期課程(修士課程)にはほとんどの4回生が進学します。また、他大学から進学してくる場合もありますし、留学生の場合もあります。いずれにしても学士取得後にもう2年間研究するために修士課程に進みます。
 ここでは、修士の2年間では年間でどのような研究生活を送るのかを見ていきたいと思います。

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修士課程に進学する意味

 4回生の時の卒業研究で出てきた問題、疑問点が完全に明らかになることはまずないと思います。構築した物理モデルでそれなりに出てきた現象を説明できたとしても、やはり疑問は出るものです。構築した物理モデルと現象の差を埋めるべく、さらなる実験や物理モデルを拡張したりする作業が修士課程で行うことです。
 大切な2年間で、物事の本質を見つけ出していく作業は恐らく開発のサイドだけに立つとなかなか持つことが出来ない時間ではないかと思います。修士課程の2年間は、そういった時間だと思います。一生懸命に過ごす修士課程2年間が終わる時には、この現象を説明できるのは私ただ一人かもしれない。そんなことを思えるようになると思います。
 専門的にも高度な論理的思考を手に入れるのが修士課程に進学する意味となります。

修士課程における研究生活

  修士課程は講義による勉強が3割、研究が7割といったところでしょうか。2年間の研究室でのスケジュールは、1年目から4回生の時に構築した物理モデルの欠点を補う作業がスタートします。
 少し具体例を挙げながら見てみましょう。
 一点係留式浮体式風車の振れ回り挙動の解明は、新形式浮体式風車の導入においてなくてはならない課題の一つです。4回生の時、このテーマを選んだ一人の学生は、流れと風の影響を調べるために回流水槽に仮設風洞を取り付け、振れ回り挙動を実験的に明らかにしました。振れ回りの挙動は実験的に明らかになりました。しかし、何故このような振れ回り角速度で動くのか、不安定な挙動を示す場合があるのかについては定量的には明らかにされていませんでした。
 そこで、修士の研究では、主に振れ回りのメカニズムについて明らかにすることを目標にしました。まず、力学的モデルである運動方程式を立てるところからスタートします。そして、運動方程式を数値的に解くための シミュレーションソフトを構築しました。実際にシミュレーションを行う際には、仔細な物理パラメータが必要となります。 風車に生じる風荷重や風モーメント、一点係留部に生じるベアリングの摩擦等々、地道に一つ一つデータを積み重ねていきます。
 最後にぶつかった壁が、どうしてもシミュレーションで実験結果を説明しきれないということでした。そして、最後に残っていた物理パラメータは浮体が回頭時に作り出す渦等による減衰力でした。この力は、従来、浮体がゆっくりと回頭する際にはとても小さい値として考えられていました。しかし、強制動揺試験というという方法でその値を割り出してみるとものの見事に実験を説明できるということが分かりました。
 学部4年生の時の研究の「何故だろう」「どうしてだろう」を、修士1回生では説明する準備を地道に行い、修士2回生で最後の山を登りきるというイメージでしょうか。
 修士の2年間では、コツコツ地道に研究を進めていくことが重要です。修士1回生での準備が無ければ修士2回生では決して花を咲かせることはできないのです。

研究生活の中での楽しみ

 地道な研究生活でも少しは楽しみがあるものです。一つは、成果を発表する為に行く国際会議、国内会議でしょう。卒業研究においてしっかり成果が出ていたら修士1回生でもすぐに国際会議に出席するチャンスが巡ってきます。国際会議は風光明媚なところで開催されることが多く、つかの間の息抜きになるはずです。それだけでなく、研究の第1線で活躍されている方、開発の第1線で活躍する方も参加しているので、そういうのを目の当たりにすることは自分の次の目標となるはずです。そして、国際会議では、そういう方々から自分たちの研究について意見をもらうことが出来ます。
 また、同じように、よく頑張っている学生には私の方から海外への短期留学を進めています。国際会議も良い機会ではありますが、やはり、2、3か月でも外国の研究室に行き、そこでどっぷり異空間で研究生活を送る事はもっと良い機会でしょう。
 学外での施設を借りての実験も機会があります。
 そのほか、研究室での旅行や、飲み会等、楽しい研究生活も勿論あります。

進学or就職

 博士前期課程(修士課程)を終えるときに二つの進路が考えられます。就職か、博士後期課程(博士課程)に進学か。一般的にはこの二つと言えるでしょう。
 修士課程の2年間の研究生活では、やはり全てのメカニズムが明らかになったとは言いにくいものです。次の3年でさらに究め、メカニズムを明らかにする作業が博士課程の3年間となります。2年間では追求しきれなかった物理メカニズムを解明することが出来ると同時に、解明に向けては実験の技法や、数値計算の技法や、論理的思考の仕方が大きく向上することになると思います。
 一方、修士を終えて就職することも選択肢の一つして勿論あります。ビジネスの荒波の中で、自分の技術がどこまで通用できるか試すことができるだろうと思います。研究室のメンバーの主な就職先は設計やプロジェクトベースデザインを手掛けるエンジニアリング会社が最も多く、設計力や発想力を必要とする会社で活躍するパターンが今は一番多いです。
 どちらを選んでも、得られた教養は必ず生かせるものです。楽しく、有意義な人生となるはずです。重要なことは、修士課程の与えられた自由な研究の時間を精いっぱい過ごすことだろうと思います。